みなさんこんにちは、建築家の松本勲です。
今回は昔の木製建具、特に雨戸の鍵についてお話ししたいと思います。
最近の玄関、窓などは、金属製や樹脂製のサッシが多くなってきていますが、サッシが出来る前は、大工さんが鴨居、敷居を取り付けてから建具業者が木製建具を作っている、という時代がありました。
一軒の住まいで坪当たり2本は木製建具が必要と言われ、二階屋40坪の住まいであれば、木製雨戸を含めて最低80本の木製建具が必要になってくる計算になり、建物の骨組みが立ち上がる上棟が過ぎると建具業者は大忙しでした。
玄関では玄関引き戸の外側に玄関用の雨戸があり、今のようにシャッターというものはありませんので、窓は、左右に動く引き違い窓や掃き出し窓にも雨戸はありました。
そんな、昔の木製雨戸の鍵について少しご覧いただきたいと思います。
皆さん、「さる」という部分はお分かりになるでしょうか?
建具の横桟に穴を開け、さらに鴨居、敷居まで穴を貫通させて木の棒で止めるという木製雨戸の鍵の部分を「さる」と呼んでいて、雨戸の上部には「上げさる」、下部には「「落としざる」もしくは「下げざる」と呼ばれる木があり、木の棒を動かすことにより雨戸上下の横桟より木が飛び出し、鴨居や敷居に開けてある穴に入り込み動かなくなる、という構造になっています。
上下のさるが振動などで動かないようにするための「寄せざる」というものもあります。
写真の雨戸は60年くらい前から使用されている木製雨戸でいまだに使用されています。
(写真左)上げさる →(写真中)上げさるを上にずらす
→(写真右)寄せさるを横にずらして上げさるが下がらないようにする
これでサルが鍵の役割をします。
そしてこちらの写真は、トイレの扉。トイレの鍵には「横さる」があり、写真に写っている上のさるはトイレと廊下側両方から動かすことが出来ますが、下のさるはトイレ側からしか動かすことが出来ず、鍵の役割をしていました。
(写真左)トイレ扉、廊下側からの写真 (写真右)トイレ扉 トイレ側からの写真
横さるをずらして鍵がかかるようにしています。
単純な仕組みですが、お茶室などの木製建具には現在も使用させています。
歴史の長い旅館などには残っているところもありますので、お出かけの際にちょっと気にしてみられてはいかがでしょうか?