みなさんこんにちは、建築家の松本勲です。
「和室って落ち着きますね」という声を良く聞きますが、
みなさん、何故落ち着くのかまでは、なかなか考えることがないと思います。
今回は、そんな「なぜだか落ち着く和室」についてお話したいと思います。
和室といえば、主役は畳。
これがとっても優れもので、「落ち着き」の素なのです。
●リラックスを生む「い草の香りと色」
畳の部屋に入るとほっとする、と感じるのは何故か。実は、い草の香りには樹木が発するいわゆる森林の香り「フィトンチッド」や、漢方薬やアロマオイルにも使われる香附子の主成分「αシペロン」などが含まれていて、リラックス効果が高いことがわかっています。
●優れた抗菌作用で臭いの原因菌を退治
日本最古の医書「医心方」をはじめ、江戸時代に編纂された「和漢三才図会」や「本草綱目啓蒙」などにも記述がある通り、古来よりい草は薬草とみなされてきました。い草には、足の臭いの原因となる微生物群の増殖を抑える効果があり、抗菌作用が高いのです。
もちろん、全ての微生物に対し抗菌効果があるわけではありませんが、大腸菌O157を代表とする食中毒菌や腐敗細菌には高い抗菌効果を発揮することが実証されています。
●畳は天然の除湿・加湿器
普段私たちが腰を下ろす畳表(表面に張られたゴザ)は、乾燥させた「い草」という植物を織り上げて作られています。い草の中は空気をたっぷり含んだスポンジ状になっているため、湿気をグングン吸い込み、乾燥してきたら取り入れた湿気を放出します。
つまり畳は、部屋の除湿と加湿の二役をこなしてくれる優れものなのです。
●ゴロゴロしたくなる「適度な弾力」
旅館等で畳を目にした途端、思わずゴロンと横になってしまった経験はないでしょうか。柔らか過ぎず、固過ぎない、適度なクッション感も畳の魅力の一つです。
この弾力性は、転倒時の重大事故を防ぐためにも一役買っています。落下などによる脳へのダメージを調べるHIC試験の結果、い草表+インシュレーション床の畳のダメージ値がもっとも低く、木製フローリングの1/2ほど。子どもやお年寄りのいる家庭にもオススメです。
●音や衝撃を吸収して静かな空間に
畳は音と衝撃を吸収するため、防音材やクッションの役割も果たしてくれます。子どもが走り回ってもフローリングより静かなのはこのおかげ。硬くて軽いものを落とした時の軽量衝撃音、人が歩いたりドンドンと飛び跳ねたりした時の重量衝撃音とも、い草表+インシュレーション床の畳は吸収性が高いことが実証されています。
●掃除がしやすく空気もキレイ
い草を織り上げて作られた畳表の表面にはたくさんの凹凸があり、細かい埃を吸着する特性があリます。部屋中に埃が舞い上がることがないので、掃除がしやすいだけでなく、部屋の中の空気が汚れにくいというメリットもあります。
近年は「必要ない」という方も増えてきた和室ですが、
住まいづくりの際にはぜひ、
様々な効果と魅力のある「畳の部屋・和室」を検討してみてはいかがでしょうか。