みなさんこんにちは、建築家の松本勲です。
前回こちらのコラムで、無垢材の中でも木の種類による違いをお話ししました。
針葉樹と広葉樹、硬さの異なる木材を目的や好みに合わせて使い分ける。
そんなお話しをさせていただきました。
今回は、種類関係なく木材に共通する特徴についてお話します。
木材は植物ですので、生育中に地中より水分と共に栄養分を吸収し木材の内部に大量の水分を含んでいます。
伐採することによって吸収は止まりますが、今度は時間の経過とともに大気の影響で水分が抜けていき、乾燥が始まります。
乾燥と共に木材は収縮を起こしますが、ある一定の含水率で安定します。
しかしその後も大気中の湿度の変化によって、木材の膨張収縮は繰り返されます。
ですから、木材で家を作る時には、木材内部の水分管理が非常に重要になってきます。
また、同じ種類の木であっても、またさらに同一の木であっても部分によって性質の違いがあります。
物質において、方向によって性質が異なることを異方性(いほうせい)といいます。
反対に方向によって性質が同じ場合は、等方性といいます。
ガラスやプラスチックなどは等方性の物質といえます。
木材の大きな特徴の一つは、木材は方向によって性質が異なる異方性の物質ということです。
この方向による性質の違いには規則性はなく、木材の種類によって異なっています。
以上のことを理解して、木材を利用する場合は異方性に留意する必要があります。
先ほど述べたように、木材は含水率の変化によって膨張収縮を起します。
そして異方性の物質ですので、方向によって収縮率が異なり変形を起こすことになります。
その変形の代表的なものが、「反り」となって現われてきます。
それでは木材はどのような方向によって、どのように性質が異なるのか。
方向を考える場合、木材は次の3方向で考えます。
左の図は丸太の状態で書いたもの、右の図は板状になった場合の図で書いています。
1.接線方向:年輪に接するような方向
2.半径方向:丸太の中心を通るような方向
3.繊維方向:木材繊維と平行な方向
以上の3方向で考えた場合、接線方向の収縮量に対して、半径方向の収縮量は約半分、
繊維方向の収縮量は、10分の1~50分の1となっているのが特徴です。
(樹の種類によっても比率は変わりますが、上記の数値は平均的な数値となります)
このことから分かるように、繊維方向(板の長さ方向)の収縮は小さいか、ほとんどありませんが、
接線方向には半径方向の約2倍の収縮を起こすことが大きな特徴となっています。
ちょっと難しい話になってしまいましたが、
要は、木材は自然素材であるが故の他の材料が持っていない特徴があるということです。
木材が持っている特徴を十分に理解した材料の選定が、家づくりにおいて重要なポイントであることはいうまでもありません。