みなさんこんにちは、建築家の松本勲です。
前々回から「木の家の優れた特徴」をご紹介していますが、今回はその強さについてお話させていただきます。
私たちのつくっている住宅の工法「木造在来軸組工法」は、日本特有の四季豊かで多湿な気候風土に適応していくために生まれた伝統的な工法を、さらに改良・発達させたもの。土台、柱、梁で建物の骨組みをつくり、筋かいや軸組に構造用面材などで釘打ちされた耐力壁をバランスよく配置して、地震や強風に耐えられるよう組むのが特徴です。
実はそもそも木は、鉄よりも丈夫な素材です。
建築材料の強さを測る目安に、比強度という値があります。これは同じ重量での強さを比較するもので、アカマツは鉄の約4倍もの引っ張りに対する比強度を備えています。また、押しつぶす力に対する強さでも鉄の約3倍です。
このため同じ強度の住宅を造る場合、木の家は鉄骨の家よりも軽くでき、地震や台風時に受けるエネルギーが少なくて済む、理想的な素材であるといえます。地震による揺れのエネルギーは、建物の重さに比例します。優れた強度を持ちながら、同時に軽さも兼ね備えた木の家は、地震の影響も少なく、大きな被害を受けずに済みます。
そして、驚かれるかもしれませんが、木は優れた耐火性能も備えています。
鉄やアルミニウムなどの金属素材は、高温になると急速に強度が低下してグニャリと曲がってしまい、一度曲がってしまった金属素材を元に戻すことは困難です。
これに対して柱や梁などの太い木は、燃えると表面に炭化層が生まれます。この炭化層は熱を伝えにくく、酸素を運びにくくする性質があり、木が燃える速度を遅らせます。
したがって、火災に遭っても木材の内部は長時間残り、強度が急に落ちることはありません。
住まい心地の良さばかりでなく、「強さ」という安心も備えた住まい。
それが「木の家」なのです。