みなさんこんにちは、建築家の松本勲です。
近年、地震や台風、局地的な集中豪雨など日本各地で大規模な自然災害が発生しています。住宅が倒壊したり、洪水で流されたりした映像をニュース等で目にしたこともあるでしょう。
災害で住宅を失ったとき、被災者をさらに苦しめるのが残った住宅ローンです。
火災保険に加入していれば保険金で残った債務を返済できる場合もありますが、契約している内容によっては十分な補償が受けられない場合もあり、また、地震保険はそもそも火災保険金額の50%までしか保険をかけることができません。
被災者の住宅ローン負担を軽減する被災ローン減免制度
「被災して自宅を失い、しかも住宅ローンの支払いが残っている」。そんな困難に見舞われたときに、助けになってくれるのが、「被災ローン減免制度(自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン)」です。
これは、被災者が生活を再建しやすいように、一定の要件に該当すれば借入先の金融機関の同意の上で、破産などによらずに債務整理(ローン債務の減免)ができる制度です。
被災ローン減免制度には次のようなメリットがあります。
●個人信用情報に登録されず、新たな借り入れに影響がない
破産手続と違い、個人信用情報に事故として登録(いわゆるブラックリスト)されないので、クレジットカードが作れなくなったり、新しいローンが組めなくなったりすることがありません。
●破産手続きよりも多くの財産を手元に残すことができる
「破産手続」では、自由財産として手元に残すことができる現金は基本的に99万円以下とされています。それに対して「被災ローン減免制度」の場合、義援金・支援金・弔慰金に加えて、最大500万円までの預貯金を債務返済に充てずに残すことができます。そのうえで、土地などを含むその他の資産を処分して債務返済に充て、それでも返済しきれない部分は金融機関から免除を受けられます。
●専門家の支援を無料で受けられる
被災ローン減免制度を利用するには、借入先である金融機関に申し出て同意を得る必要がありますが、債務整理の手続きについては「登録支援専門家」(弁護士・公認会計士・税理士・不動産鑑定士など)の支援を無料で受けることができます。
被災ローン減免制度の対象は?
被災ローン減免制度の対象になるのは、「災害救助法」が適用された自然災害により被災した個人または個人事業者です。
「災害救助法」とは、大規模な自然災害が発生したときの応急救助を目的とした法律で、国(内閣府)が適用を決定します。たとえ自然災害で被災したとしても災害救助法が適用されなければ、被災ローン減免制度の対象にはなりません。
他にも様々な利用条件などもあり、手続きについても注意すべき点がありますが、まずは何よりも、この制度があることを知っていることが大事。
災害に遭わないことが望ましいことはいうまでもありませんが、もしもの時のために、頭に入れておいてください。