みなさんこんにちは、建築家の松本勲です。
私たちが住まいづくりで使用している「無垢材」。その魅力の一つが、時を経るごとに美しくなる「経年美」です。
実際、無垢材で住まいづくりをと考える方の多くが、時を経て美しさを増すことに魅力を感じていらっしゃるよう。今回は、住宅の内装や家具など長く使うことも多い木製品の魅力「経年美」についてお話したいと思います。
●経年によって深みのある「色合い」へ
天然の無垢材の経年変化と言えば、日焼けによる「色合い」の変化がもっとも大きな特徴です。木製家具を例に取ってみると、経年によって飴色に変化したヴィンテージ家具などは、新品にない風格を感じますよね。
木材はセルロース・ヘミセルロース・リグニンの3種類で大部分が構成されています。しかし、木の色は木材中のごく僅かな成分である、ポリフェノールやアミノ酸・ステロイドなどの「抽出成分」によって決まります。ほとんどはこの抽出成分が光を吸収し分解されることで、色合いが変化しています。
色合いの変化の仕方は樹種によってさまざまで、濃くなるものもあれば淡くなるものもあります。さらに、同じ樹種でも部位によって変化の仕方が異なるなど、様々な色合いに変化していきます。
具体的にどのように色合いが変わるのか?実際のフローリングの写真でご紹介します。
まず、経年によって色が濃くなっていく樹種がブラックチェリーです。ブラックチェリーは色の変化が大きいことで知られていて、淡い桃色から飴色へ、深みを増していく色変化が人気の理由の1つです。
逆に経年によって色が淡くなっていく樹種が、ブラックウォルナットです。時間とともに柔らかく、落ち着いた印象へ変化していきます。
上記2枚の写真は経年変化前と変化後を比較したものです。自然光や照明によって色味が変化し、空間の印象も違って見えるのが分かると思います。
一般的に人工素材は経年により美しくならずに劣化すると言われています。一方、天然素材である木はもともと生きていた素材なので、人とは相性の良い、親和性の高い素材です。経年によって美しくなっていく天然の無垢材で作られたものには、より「愛着」を感じることができるのではないでしょうか。
暮らしの中で少しずつ色合いに落ち着きと深みが増し、独特の風合いを醸し出していくのは天然の無垢材ならでは魅力。10年、20年と「一緒に歳をとっていく愉しみを味わえる」天然の無垢材を、ぜひ暮らしの中に取り入れてみてください。