みなさんこんにちは、建築家の松本勲です。
今回は、階段の手すりについてお話したいと思います。
階段の手すりは空間コーディネートのデザイン性を高めるアイテムの一つでもありますが、その最も重要な役割は、階段の段差につまずいたり、滑ったりしたときなどに落下を防ぐということにあります。
家を新築する場合には、階段の手すりは建築基準法施行令第25条により、「床から1mを超える高さの階段の片側には手すりを設けなければならない」と定められていて、「両側に側壁がある場合も、少なくとも片側には手すりを設置すること」が義務付けられています。
しかし平成12年(2000年)の法改正前は、階段の両側に側壁があれば手すりは必要なかったため、築年数の古い住宅の階段には、手すりのないものも少なくありません。
古い家で、階段に手すりがないという場合は、リフォームで手すりをつけることで、階段を昇降する際の安全性や安心感を高めることができます。
階段に手すりを設置する場合の注意点として、安全安心を考えた位置に設置するという点が挙げられます。例えば、手すりが高すぎると足腰の悪い人は体重をかけて歩きにくかったり、逆に低いとつかみ損ねて転倒するリスクがあります。
つまり、手すりを安全に使用するためには、適切な高さに設置するということが重要になります。
階段の手すりを設置する高さは、一般的には750~850mm程度の位置と言われていますが、リフォームの際などは、実際に使う人の手を手すりに当てて高さを決めるケースも少なくありません。
また、階段の手すりは高さだけでなく、目的などに合わせて形状を選ぶことも大事です。例えば、丸い棒状の手すりであれば、手を滑らせるように歩けるため、スムーズな移動が可能です。また、平らな手すりであれば、体重をかけもたれて歩くこともできるなど、形状によって使い心地も異なります。
高齢者の場合は握力が弱くなっていることもあるため、滑りにくいグリップ手すりや、後付けも可能な手すり用グリップを取り付けるのも効果的です。また、ウイルス対策として抗ウイルス機能付きの手すりという選択肢もあります。
室内の階段以外にも、玄関に階段や段差がある場合や、トイレや浴室のような立ったり座ったりする場所でも、手すりが必要な家も多いでしょう。
介護リフォームの場合はこれら手すりの設置は介護保険の対象になりますので、お住まいの市町村などに問い合わせてみるのもいいでしょう。助成を受けるには要介護認定が必要になるため、早めに確認が安心です。
階段の上り下りの際に不安を感じることがあるような場合は、安全に階段を使用できるよう、手すりのリフォームを検討してみてはいかがでしょうか。