みなさんこんにちは、建築家の松本勲です。
例えば、新築の家を建てるためにプランを打ち合わせする際。話題の中心はリビングやキッチン、水まわりなど。リフォームでも、まず水回りやリビングを思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。それに対して、一般的に寝室は優先順位が低くなりがちで、そこに予算をかけようという方は決して多くないかもしれません。
しかし、睡眠は心身の疲れをリフレッシュして、明日への活力を充電するための大切な時間。猛暑が続き寝苦しさを感じる今の季節に、改めて寝室の環境を考える方もいらっしゃるでしょう。
寝室は人生の約3分の1を過ごす場所。すこやかな眠りとさわやかな目覚めをサポートしてくれる快適な寝室を目指してみてはいかがでしょう。
●光、音、通風、温度に配慮が必要
寝室で大切なのは、静かで落ち着ける空間作り。そのために特に重要な要素が、「光」と「音」です。また、「通風」「温度」も重要。寝室をどこに設けるか、どちら向きに寝具を置くか、どんなカーテンをつけるかは、これらと密接な関係があります。
人間が生活リズムを整えるには、毎日朝日を浴びて体内時計をリセットする必要があるといわれています。できれば、朝日が差し込む位置に寝室があると、さわやかな気分で一日がスタートできるでしょう。
しかし、東向きに大きな窓があると、日差しで早朝から目が覚め十分な睡眠が取りにくくなることも。夏場は暑くて寝ていられなくなる可能性もあります。
また、西向きに大きな窓があると、西日で室内が暑くなり、夜になっても寝つきにくいことに。とはいえ、カーテンやブラインドである程度コントロールできるので、周囲の環境や予算などを考えて最適な位置を選びたいものです。
眠ろうとする人にとって、騒音となるべく縁を切りたいと思うのは当然の心理です。夜更かしする家族がいるなら、寝室はリビングや浴室など音がする部屋から離したいもの。キッチンも、冷蔵庫や食洗機、炊飯器といった家電の音がするので、隣接させない方が無難です。同じフロアにある場合は、収納を間に挟むなどして音が伝わりにくくすると良いでしょう。
また、特に高齢者の場合、トイレが寝室の近くにあると便利です。
●落ち着いた飽きのこない空間に
寝室は心身を休める場。リラックスできるよう、内装は全体的にシンプルで落ち着いた、飽きのこない色づかいを心がけると良いでしょう。カーテンは、遮光性や遮音性があるものを選ぶと安眠を確保しやすくなります。
照明は、部屋全体を照らすものとは別に、足元灯を設置しておくと、夜中にトイレに行く際などに便利。また、間接照明で穏やかな雰囲気を演出するのもおすすめです。
スペースに余裕があれば、好みに合わせて書斎コーナーやミニバー、化粧コーナーを設けるのも良いでしょう。就寝前や寝起きのちょっとした時間が充実するのはうれしいものです。
●適度な距離感が保てる「夫婦別寝」
子どもが幼いうちは家族が一緒に寝ていても、ある程度大きくなったら夫婦と子どもが別々に休むスタイルを選ぶ人が大多数です。夫婦が一緒に寝る際、エアコンの好みの温度が違ったり、眠るタイミングが違ったりすると、どちらかが我慢してストレスを感じることもないとはいえません。パートナーのいびきや歯ぎしりが気になる人もいるでしょう。
子どもが独立して子ども部屋が不要になり、空間に余裕がある場合は、夫婦それぞれが寝室を持つというのも1つの手です。
2つの寝室を設けるほどスペースに余裕がない場合でも、夫婦のベッドの間を家具や柱、可動間仕切りでゆるく区切り、ほどほどに独立した空間を作ることは可能。お互いの気配が感じられながらも適度な距離感が保て、夫婦それぞれが気兼ねなくマイペースで夜を過ごすことができるでしょう。